蕗狩軽便図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

『ヒエログリフを解け』とても面白くて一気読了しました

ヒエログリフを解け: ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース』を読みました。

本当にひさしぶりに斜め読みせず1行ずつ文字を追ってしっかりと読みました。老眼がやたら霞んでしょぼしょぼするのを目薬注しながら明け方までかかって一気に読み切りました。

エジプト古代の歴史から欧州との関係とその位置付け、暗号解読と比較しながらの言語文字体系解読、シャンポリオンとヤングの天才っぷりと、どのくだりも面白くて読むのを止められませんでした。

3種類の方法で綴られたロゼッタストーンの碑文は、神々の創造の物語でも建国の物語でもギルガメッシュのような英雄譚でも崇高なる哲学的テーマの論説でもハムラビ法典のような歴史的文書でも無く、「父の座に取って代わった若き王」の素晴らしき善行と王の偉大さをあらゆる階層の人々に伝え広めるためにだけの、まるで何処かの国の最高指導者様などを讃える記事や宣伝ビラみたいな、翻訳に関わった研究者たちにとってまったく「その内容はつまらないもの」だったというのも初めて知りました。なんとまあロマンの無い……

ロゼッタストーン発見当時のフランス、イギリスがあちこちで行ったやりたい放題の侵略破壊略奪の様子も丁寧に語られていて、ルーブル美術館大英博物館って強盗盗賊の宝物庫みたいなもののように思えてきます。

しかしナポレオンがエジプト遠征軍の一部として伴った優秀な調査研究者達のチームの活躍の描写は興味深かったです。

以下、面白かった知識や記述。

ヒエログリフは中国語漢字文章表記法と似ているところがある。

ヒエログリフには母音がない。

ヒエログリフには「決定詞」という文字がある。

・「ひとり旅をする者こそ、最も速やかに旅ができる」

カルトゥーシュがずらりと並んだ(全部で七十六) 歴代ファラオのリストがある。

話し言葉をスムーズに理解できるのは、無意識のうちに文脈からどんな言葉が次に来るか予測しているから。

・中国の「施氏食獅史」という話は、まったく同じshiという音が声調を変え九十二回繰り返される。西洋人の耳には、shi が何十回も繰り返されているようにしかきこえない。

・For Rose who knows why. (ローズに捧げる。その理由はきみが 知っている)という献辞は違うイントネーションで For Rose. Who knows why? (ローズに捧げる。 理由なんて誰が知る?)と読める。

・鉄の振動板で人の声をとらえようと考えたのはエジソンが最初ではなかった。フランス人の植字工で鋳掛け屋のエドワール=レオン・スコット・ド・マルタンヴィルが、1857年世界で最初に音をページに書き留められる機械をつくった。

スペイン語の pies は 「足」であって pastries (焼き菓子) ではない。フランス語の blessé は「傷ついた」という意味で、 blessed (祝福された)ではなく、 pain は 「パン」であって「痛み」 ではない。

・Alligator はスペ イン語を通じて英語の中に取りこまれたが、それは「トカゲ」を意味する el lagarto の誤用だった。

アラビア語をしゃべる人間は Alexanderが、アラビア語の名前によくあるように the で始まっているようにきこえて、 al-Exander と思う。逆に、英語をしゃべる人間は、ムーア式の宮殿を the Alhambra と呼んでいて、 これは the the Hambra と呼んでいるのと同じ。

言語学の有名な著作に「女性、火、危険な物事」というタイトルがある。これはジルバル語と呼ばれるオーストラリア原住民の言語で、それら三つの言葉が同じ仕切りに入っていることから来ている。 

ロゼッタストーンと同じように3種類の方法で書かれたカノーポス・ストーンのヒエログリフシャンポリオン方式で翻訳するとギリシャ語のテキストと完璧に合致した。「それはまるで、古代エジプト人が包帯の中からふいに現れてわれわれに話しかけ、われわれが彼らの言葉を話すのを観察しているようだった」と、テストに関わった学者が驚いた。

 

追記;

肩から腕の痺れと痛みが良くもならず悪くもならず続いている。神経の炎症が治るまでタリージェの手持ちがあるとよいのだが。