蕗狩軽便 図画工作日記

ー シュレマル工房 めもらんだむ ー

ノンフィクション『ピダハン』 (「言語本能」を超える文化と世界観)

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ダニエル・L.エヴェレット 『ピダハン - 「言語本能」を超える文化と世界観』読了。

面白かった。興味深かった。凄かった。

小説じゃなくて、ノンフィクションです。これまで知られている言語のどれにも属さない言語を話す民族の30年をかけた言語研究フィールドワークの記録と研究内容の一般向け解説を交えた作品です。

もう少し詳しく書くと、

アマゾンに住むピダハン部族は、生きている自分と、今現在自分が一緒に暮らす人達が体験する事だけからしか思考しない文化と言語を持ち、原則生きる上での全ての事を自分で始末処理する能力を個人が持っていることが前提となる社会で共同体としての生活を営み、個々人の間の嘘や浮気や裏切りや暴力や殺しもなんでもかんでも含めての上で、個人としても共同体としても、他に類を見ないほど幸せに生きている。宣教師としてこの部族の地に来て30年間にわたって断続的に一緒に生活し、彼らの言語を習得研究してそれまでの言語生成理論を覆した凄い言語学者でもあり敬虔なキリスト教信者である著者は、彼らの文化と思考、そしてそれによって生成された言語と生き方を理解することにより、信仰と家族を捨てるに至ったという、しかるべく物語を盛ってるところもあるでしょうが、なんにしろなかなか強烈なお話でした。

でも、読後感はなぜかもうひとつ。ちょっとの間ダウナー的傾向になってやばいなあ、なんでかなあ、と思っていたところ、唐突に、「いや、オレ、マジ知らんことばかり。わからんことばかり。みたことも聞いたこともないことばかり。体験したことないことばかり。読んだ事のない本ばかり。ということは、つまり、これからどれだけ楽しめるかほとんど無限大ってことじゃね?」と気づいてしまって、それで満足し切ってしまうくらいの幸せ感を感じたりもして、こういうのって読書の影響もあるんだろうかと妙な気分です。

しかし、みすず書房って、こういう面白い本をたくさん出版しているので嬉しいですね。