蕗狩軽便図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

「文化御召」とはなんぞや? 〜 脳味噌ぐちゃぐちゃ欣喜雀躍泥沼惑溺辞書探索の旅 〜

随分と昔(ファイル情報をみたら2001年でした)に書いてウェブサイトに公開していた文章です。プロバイダ変更時にサイトを閉じてしまったのですが、たまたま控えのファイルを発見して読み返したらそれなりに面白かった(蕗狩軽便図画工作部独善評価)ので、またファイルを見失ってしまう前に、ちょっとだけ手を加えてここに再録しておくことにします。

 

------------

「文化御召」とはなんぞや? 〜 脳味噌ぐちゃぐちゃ欣喜雀躍泥沼惑溺辞書探索の旅 〜

ちょっと興味をひいたから、で辞書をひき始めたはずなのに、結果はとんでもない辞書探索の旅ということになってしまいました。辞書は原則「広辞苑第6版」を使用しています。

ふつうは辞書をひいていて、こんな経験をすることも珍しいと思いますし、他人が辞書をどんな風にひいているかを知るのも参考にもしてもらえるのではと思いますので、今回は特別大サービス、その要領の悪いおはずかしい探索の過程と成果をすべてご紹介します。

なお、私のボケたあたまでの、とりとめのない探索と思考の展開の過程を追体験していただくため、そのとんでもない寄り道だらけの経過を逐一すべて書き記し、あまりに寄り道が深い場合を除いて、原則的には別記参照を避けて記述しましたので、一般常識基礎知識欠落無知蒙昧、論理思考皆無、注意力散漫、意識混濁、欣喜雀躍、脳味噌ぐちゃぐちゃ、まさしくスパゲッテイ状泥沼探索思考の過程をじっくりとお楽しみください。

で、まずはもちろん、【文化御召】の語釈からですが、

ぶんか‐おめし【文化御召】‥クワ‥壁御召縮緬(ちりめん)の一種。経(たて)に紡績先染絹糸を、緯(よこ)に壁撚糸を用い、湯通し・湯熨斗(ゆのし)を施して波状を出した平織織物。

こんな語釈を読んで、なにがわかるというのだろう?というのが素朴な疑問のはじまり、いえ、知的好奇心のなせる探索への惑溺という底なしの泥沼に踏み込むきっかけでした。

この語釈を読んでも、どうも織物の一種だということくらいしかわからない。縮緬(ちりめん)が織物であることを知らなかったら、最初のセンテンスの御召縮緬(ちりめん)の一種なんてのは、それこそなんのことかわかんないよ。なんじゃこれ、とほとんど自動的にこの御召縮緬という言葉をさがして見出しを追い始めたのはいいのですが・・・

その結果は、語釈のなかにでてきた知らない単語をひとつづつ調べていくという、なんともはや、英語の勉強を始めたばかりの人間が、往々にして勘違いし、無理に英英辞典を引くときのような、考えようによっては絶望的に悲惨な作業を延々と、半分は嬉々として行うことになってしまったというわけです。

ということで、最初に目に入ってきた見出しが、

かべ‐おめし【壁御召】緯糸(よこいと)に練壁糸の染めたものを入れ、細かい皺(しぼ)を出した御召。

なんですとお?練壁糸皺(しぼ)御召?なんじゃこれは?しゃあない、ひとつづつひいてみることにするか、とさがしたけれど、練壁糸なんて見出しはみつかりません。

しかし、ここであきらめては、早くもこのプロジェクトが挫折することになってしまう。これはいかん、とボケた頭を必死でしぼり、練糸と壁糸に分解して引いてみると、

ねり‐いと【練糸】生糸を石鹸やソーダの溶液中で処理し、セリシンを除去した白く光沢のある絹糸。

はあ?ソーダセリシン??

ソーダ【sodaオランダ・曹達】(1)ナトリウム塩の俗称。普通には炭酸ナトリウムを指す。(2)ソーダ水の略。「クリーム‐―」、【ソーダ硝子】【ソーダ工業】【ソーダ硝石】【ソーダ水】【ソーダ石灰】【ソーダ石鹸】【ソーダ灰】【soda pulp】【soda fountain】

はあ、ソーダスカ。

で、セリシンはというと、

セリシン【sericin】蚕の繭糸中の二本のフィブロイン繊維の周囲をつつんでいる蛋白質で、熱湯で処理すると溶出する。絹膠。

ふぃぶろいん???

fi・bro・in【生化】 フィブロイン 《繊維状の硬蛋白質

つまりこれは、絹糸や蜘蛛の糸などの繊維を構成するタンパク質のこと。ファイバー状のタンパク質という意味のラテン語だろうか?

というわけで、はあ、なるほど、つまり練糸というのは、蚕の繭から取った原糸を煮て表面のにかわ状物質を取り除いて白い光沢を出した糸ということなのですね。練糸の練は精錬の意味だったんだいうことに、おそまきながら気がつきました。(下記*1)

で、壁糸のほうは、

かべ‐いと【壁糸】強く縒(よ)った太い糸を細い平糸の周囲にまきつけるように縒りあわせた糸。これを緯糸(よこいと)として織ると、仕上り後、横に縮んで細かな皺(しぼ)が出来る。壁縮緬(ちりめん)・壁糸織・壁風通(ふうつう)・壁一楽(いちらく)に使用。
―‐おり【壁糸織】

平糸って?

ひら‐いと【平糸】撚(よ)りの少ない生糸。かまいと。

かまいとぉ?

かま‐いと【釜糸】釜から繰り取ったままで、まだ撚(よ)りをかけてない絹糸

あ、さっき「蚕の繭から取った原糸を煮て表面のにかわ状物質を取り除いて白い光沢を出した糸」といったのが、この【釜糸】なのかな?しかし、これ、練糸とはどうちがうんだろう?

とにもかくにも、練壁糸というのは、なんかしらんが布の表面に縮緬のような特殊な模様をつけるために、「蚕の繭から取った原糸を煮て表面のにかわ状物質を取り除いて白い光沢を出した糸」を「強く縒(よ)った太い糸を細い「釜から繰り取ったままで、まだ撚(よ)りをかけてない絹糸」の周囲にまきつけるように縒りあわせた」特別な糸だということが判明。この練壁糸が織り上がり後に縮む性質を利用してしわ、つまり「しぼ」を出すことができる。それが熟語の例にでている【壁糸織】ということなんですね。ここまでは、なんとかわかりました。

で、【壁糸織】を引いてみると、

かべいと‐おり【壁糸織】壁糸を緯糸として織った平組(ひらぐみ)織の絹織物。

平組織?こういう見出しは見つからなくて、いつもの伝で2つに分解。

ひら‐ぐみ【平組】平打にした組紐

ひら‐おり【平織】織物組織の基本形の一。経糸(たていと)二本・緯糸(よこいと)二本を最小単位として、経糸緯糸を交互に上下に交叉させる織り方。また、その織り方の織物。平地。[図]平織

うーむ、つまり、ごく普通の織り方だけど、緯糸が特殊なので、組紐風になるということなのかな?どうもよくわからん。

ま、それはともかく、このほかに織り方の種類はあるのかなと、「織」で逆引きしてみたら、でてくるわでてくるわ、なんやら織りとかなんとか織とか、ものすごい数が出てきてしまったので、そのなかから、織物の名前じゃなくて基本的な織り方の名前の例である綾織り、繻子織りを揚げときます。

あや‐おり【綾織】(1)綾織物の略。また、綾を織る人。栄華若水「人々の唐衣・表着の織物どもは、―召して仰せ侍りぬ」_斜文織(しやもんおり)に同じ。(2)放下師(ほうかし)などのする曲芸の名。数本の竹管などをほうり上げて手玉に取る技。あやとり。【綾織竹】【綾織物】

うーむ、(2)の曲芸の方は予想外でした。で、熟語例の【綾織竹】

あやおり‐だけ【綾織竹】綾織の曲芸に用いる竹。あやだけ。

これは新知識でしたね。

肝心の綾織物のほうは、

あやおり‐もの【綾織物】綾を織り出した美しい毛織物・絹織物・木綿織物。あやおり。

綾織りのうち、もっとも代表的なものは、

しゃもん‐おり【斜文織織物組織の基本形の一。組織点が斜めの方向に連続して斜線状を表すもの。あやおり。[図]斜文織

すぎあや‐おり【杉綾織】杉の葉のような縞に織った服地。ウーステッド・ホームスパンに多い。ヘリンボーン

ウーステッドというのは、

ウーステッド【worsted】梳毛糸(そもうし)で織った毛織物。主に男子の背広用。

この、梳毛というのは

そ‐もう【梳毛】獣毛(主に羊毛)繊維を開き、これをくしけずって短繊維を除き、長さのそろった長繊維を直線状に平行にそろえること。また、その長繊維。

そもう‐ぼうせき【梳毛紡績】‥バウ‥羊毛繊維を平行にそろえて、表面が滑らかで均斉な糸を得る紡績法。紡毛紡績に比べて梳毛・前紡工程などが多い。

というわけで、家内がむかしホームスパンを習っていた頃、毛糸の手紡ぎをするのに、まずカーディングをして、それを棒状にまとめて、それから紡ぎ車にかけて・・・という工程を説明してくれたんですが、その、最初のカーディングがこの梳毛なんだと、やっと理解できました。

ホームスパンというのは、

ホーム‐スパン【homespun】経(たて)・緯(よこ)に太い手紡ぎの毛糸を用いた手織の毛織物。また、これに似せて機械紡績糸で織ったもの。洋服地用。

じつは、こういう繊維を整える過程は、綿でも同じで、こっちはまず綿繰機にかけてタネを取り去り、同時に梳く作業をして精製します。

布団綿の打ち直しというのも、要はこのカーディングの工程のことで、使用中に切れて短くなった繊維をとりのぞき、繊維の方向をそろえることによって、もとの弾力を取り返すわけです。

もちろん、古い繊維は劣化していますから、もとの通りにはなりませんし、短くなった繊維が除かれて目減りしますから、新しい綿を2,3割は加えなければなりません。だから、打ち直しはせいぜい3度までなんだそうです。

で、この梳毛を使った織物は、

そもう‐おりもの【梳毛織物】梳毛糸またはこれに他糸をまぜて織った毛織物。サージ・モスリン・カシミヤ・絨毯(じゆうたん)の類。

ということで、高級な毛織物のことなんですね。

要するに、ウーステッド・ホームスパンというのは、高級紳士服などの布地ということなんですけど、これが杉綾織だというのですね。で、ヘリンボーンは、その洋風の言い方ということなのですが、

ヘリンボーン【herringbone】(「ニシンの骨」の意) 杉綾織(すぎあやおり)。

いやはや、西洋人の感覚というのは野蛮というか、風流を解さないと言うか・・・

もうひとつの、繻子織りの方は、

しゅ‐す【繻子】繻子織の織物。布面は滑らかで光沢がある。経糸緯糸に本絹の練糸を使用した本繻子、絹綿交織の綿繻子、綿毛交織の毛繻子、また種々の浮模様を織り出した紋繻子など種類が多い。天正(1573~1592)年間、京都の織工が中国の法にならって初めて製造。多く帯地などに用いる。サテン。「―の帯」【繻子織】【繻子鬢】【繻子蘭】

しゅす‐おり【繻子織織物組織の基本形の一。五本以上の経緯糸を組み合せて組織し、斜文織と違って組織点が連続していないために、その表面には経緯いずれか一方だけが現れ、平滑で光沢がある。[図]繻子織

というわけでした。

ところで【壁糸】の項にでてきた、縮緬(ちりめん)・壁糸織・壁風通(ふうつう)・壁一楽(いちらく)も引いてみました。

かべ‐ちりめん【壁縮緬】経(たて)に縒(よ)らない平生糸を、緯(よこ)に壁糸を用いた縮緬の一種。皺(しぼ)の立ちかたが通常の縮緬と異なる。

なるほどね。テクスチャー、風合いがちがうので、それを示した名前になるというわけです。

縮緬という言葉はさすがに知ってましたが、念のため引いてみると、

ちり‐めん【縮緬】絹織物の一。経糸(たていと)に撚(より)のない生糸、緯糸(よこいと)に強撚糊つけの生糸を用いて平織に製織した後に、ソーダをまぜた石鹸液で数時間煮沸することによって緯の撚が戻ろうとして布面に細かく皺をたたせたもの。書言字考「[糸偏+芻]紗、縮綿、チリメン」、【縮緬絵】【縮緬紙】【縮緬雑魚】【縮緬皺】

この[糸偏+芻]紗というのは漢字がないので、[偏+旁(つくり)]で表しておきましたが、これはいったいなんなのか、漢和辞典をひいてみたら、なんとまあ意味は「ちぢみ」。つまり「芻」というのが、刈り取った草を手に束ねた形をあらわしていて、そのように皺(しわ)のよった生地という意味らしいことがわかりました。なぜ、同じものを表すのにこんなにいろんな文字があるのでしょう?でも、それが文化というものなのかも知れないなとちょっと感動します。

ところで、おなじく「芻」の字がこんどは偏につかわれている「皺」(しわ)は、「しぼ」とも読みまして、

しぼ【皺】(1)織物の糸の撚(よ)り方の具合で、織物の表面にあらわれた凹凸。また、革や紙に加工した皺(しわ)のような凹凸。(2)烏帽子(えぼし)の肌に作りなす皺。

というわけ。でも、私の専門の方面では、床柱(床の間につかう飾り柱)用に表面にでこぼこがあるスギ丸太を特にしぼ丸太といって珍重し、かつては京都北山の名産として、全国に流通していました。もっとも今はしぼ品種が各地に普及したり、立木に型をおしあててつくる人工しぼなんてのもあって過剰生産気味です。でもこれ、業界では絞という字を書いたりするんですけどね。

熟語例で目に付いたのは、

ちりめん‐ざこ【縮緬雑魚】カタクチイワシの稚魚を煮て乾したもの。また、ハゼ科のシロウオを煮て乾したもの。ちりめんじゃこ。

大根下ろしと混ぜてしょうゆをちょっと垂らして・・・ああ、唾が湧いてきた。これ、カタクチイワシの稚魚だったんだ。だからこのちりめんじゃこを板状にのしたのを、たたみいわしっていうんですね。

ただ、このカタクチイワシのちりめんじゃこは関東地方のもので、私が生まれた関西ではシロウオだったように思います。最初に東京に来たときに、ちりめんじゃこの色や形が微妙ににがうので、まがい物じゃないかと不信感を持ったことがありましたものね。

ちりめんじゃこの「ちりめん」は、縮緬皺】とおなじで、縮緬のように細かいしぼのような、という意味なのでしょう。

もうちょっとおおきいのは、小女子(こうなご)というのですが、これの語源はなんなのでしょう?どうせだから、と、小女子をひいてみたら、これまた寄り道がたのしくなって、これもこちらにまとめておきます。(下記*2) 

さて、おつぎの壁風通はというと、

かべ‐ふうつう【壁風通】壁糸を緯糸(よこいと)として織った風通織。明治期、婦人用夏着として流行。

風通織というのは、

ふうつう‐おり【風通織】織物組織の一種。表裏異色の経糸(たていと)・緯糸(ぬきいと)を用いてそれぞれ布面を構成し、文様の部分で表と裏の配色が逆になるように織った二重組織の織物。表裏の糸が交叉する部分以外は表裏別々に織られた布二枚によって袋状をなしているところから風通の名が付けられたという。この技法は、すでに正倉院裂(ぎれ)の中にその例が見られる。

へえ、正倉院ですか。そんなころから、こういう複雑な、想像するだに華やかな織物があったのですね。この織り方を使ったものとしては、こういう見出しがでていました。

ふうつう‐おめし【風通御召】風通織で紋様を織り出した御召。
ふうつう‐がすり【風通絣】風通織を応用して絣模様をあらわした織物。着尺(きじやく)・座蒲団などに応用。
ふうつう‐モール【風通―】金銀の線を用いずに織ったモール。金々先生栄花夢「帯はびろうどまたは博多織―などと出かけ」

この、金々先生栄花夢というのは、文化文政時代の江戸戯作黄表紙の祖となったという、恋川春町画作の戯作本ですね。(下記*3)

それにしても、この時代にもびろうどが、一般的に高級織物の代表として扱われていたことがわかるという、なかなか配慮のある引用です。

しかしまあ、【壁風通】……明治期、婦人用夏着として流行。なんて文章に出会うたびに感じ入るのですが、物質的にもずっと貧しく不自由だったはずの昔の方が、ずっとしゃれたというか、華やかで情緒のあるものがあり、それを楽しむ余裕のある生活をしてたように思われて、自分の余裕のない、味気ない生活を省みて、ひどくうらやましいというか不思議な気がします。

最後の壁一楽という見出しは、さすがになくて、これも逆引きで試してみると、

いちらく【一楽】土屋一楽。堺の籐細工の名手。天明(1781~1789)の頃、一楽編(あみ)を創出した。生没年未詳。

いちらく‐あみ【一楽編】土屋一楽の発明した籐細工の精巧な綾織の編み方。鼻紙入れ・キセル筒などに用いる。一楽。

いちらく‐おり【一楽織・市楽織】(1)一楽編(あみ)に同じ。(2)綾織にした精巧な絹織物。一楽。綾糸織。

つまり、壁一楽というのは、一楽織という精巧な綾織りの緯糸に壁糸を使ってしぼを出したものということなのでしょう。

壁糸織のほかに、壁織というのもありました。ここまで来るとなにがなんやらわからなくなってきますが、

かべ‐おり【壁織】絹織物の一。経糸(たていと)に生糸または染色した練絹糸を、緯糸(よこいと)に壁糸を織り込んで、細かい皺(しぼ)を出したもの。

壁糸織は、壁糸を緯糸として織った平組(ひらぐみ)織の絹織物だから、つまり違いは、経糸(たていと)に生糸または染色した練絹糸をつかっているということ?

しかし、生糸は、

き‐いと【生糸】蚕の繭からとった繊維をあわせて糸としたままで、まだ練らない絹糸。

ですから、ほんと、なにがなにやらわからない。

結局、壁織は経糸(たていと)に何をつかってもいい、つまり経緯ともに壁糸をつかって平打ちにした組紐を組むように織ることも含んでいると言うことでしょうか?いやはや、複雑怪奇です。

ところで、ちょっと前から出てきている、糸の撚りに関してですが、ここでまとめて引いてみました。

より‐いと【縒糸・撚糸】(1)糸をよること。(2)よりをかけた糸。また、より合せてつくった糸。片縒糸(かたよりいと)と諸縒糸(もろよりいと)とがある。

かたより‐いと【片縒糸・片撚糸】左縒りまたは右縒りのどちらか一方の縒りをかけた糸。

もろより‐いと【諸撚糸】二本の片撚糸を、その撚りと反対の方向に撚り合せて作った糸。諸糸。

いやはや、撚りひとつにしてもこんなに種類があるとは思いも「より」ませんでした。

ということで、やっとおおもとの、ぶんか‐おめし【文化御召】の語釈の後半に取りかかることが出来るわけですが、ここで、経(たて)に紡績先染絹糸を、緯(よこ)に壁撚糸を用い、湯通し・湯熨斗(ゆのし)を施して波状を出した平織織物、とくどくど書いてあるのはどういうわけでしょう?

これは、何か重要な理由があるに違いないと、知っている言葉でも念には念を入れて語釈を確かめていくことにしました。

ぼうせき‐いと【紡績糸】バウ‥(1)綿花・羊毛・麻・絹などの繊維を紡績加工して製した糸。(2)狭義には、機械紡績による片撚(かたより)の綿糸。

なるほど、手織の糸はふつうは諸糸を使いますから、これと区別するためにわざわざ紡績糸と言ったのですね。

さき‐ぞめ【先染め】布地を織る前に、糸のうちに色彩文様を染めておくこと。御召・紬織など。←→後(あと)染め

ふうむ、なんで、先染めなんて強調したんだろうと思って、反語の後染めを確かめてみると、

あと‐ぞめ【後染め】白生地に織り上げた後、染色加工すること。友禅・小紋の類。←→先染

なーるほど、友禅・小紋かあ。工程に手間のかかる染織の代表ですよね。先染めという言葉で、工程を示すとともに手間がかからないいうことを強調しているということで、納得。

念のために友禅、小紋を引いてみると、

ゆうぜん【友禅】イウ‥(1)友禅染の略。(2)京・大阪で産出した和紙。、【友禅絵】【友禅扇】【友禅金巾】【友禅染】【友禅縮緬】【友禅ビロード】【友禅モスリン】【友禅模様】

予想通り、縮緬との組み合わせが出てきました。それはともかく、熟語例の【友禅ビロード】【友禅モスリンというのがすごいですね。どっちも舶来の、ポルトガルわたりの織物です。

ビロード【天鵞絨】(veludo ポルトガル または velludo スペイン の訛) もと西洋から舶来したパイル織物の一。経(たて)または緯(よこ)に針金を織り込み、織り上げて後これを抜き取るとき、経または緯の輪奈(わな)をなしているのを切り放って毛を立たせたもの。絹製のを本天といい、毛房がやや長くて光沢に富み、ショール・マント・袋物などに用いるのをシール天という。ベルベット。「―の服」

ビロードがつく熟語例として、あげられていたのが、これ、

ビロード‐きんくろ【天鵞絨金黒】カモの一種。雄は全体黒色で翼の一部が白色。雌は暗褐色。秋、北方から日本へ渡来。海上にすみ、水底の貝を丸呑みにする。

ビロード‐しだ【天鵞絨羊歯】ウラボシ科ヒトツバ属の常緑シダ。葉は単葉で肉質、高さ約一○センチメートル。全体に黄褐色の短毛があり、ビロード状に見える。わが国から中国東北部にかけての樹皮などに着生。ビロードラン。

ビロード‐ゆうぜん【天鵞絨友禅】‥イウ‥ビロードに花鳥・風景などの絵画的な文様を友禅染で表し、その一部を毛羽立てて立体感を表した織物。額・壁掛その他装飾用。

ビロード‐らん【天鵞絨蘭】〔植〕シュスラン(繻子蘭)の別称。

妙に生物起源のものが多いのがおもしろく感じられます。よほどその肌触りというか、質感が、ほかに例がなくまた印象的であると言うことの証拠かも知れませんが、おかげでこれらの生物の名前がつけられたのが、ビロードが伝来してからということがわかります。

モスリンの方は、

モスリン【muslin・毛斯綸】(もとモスールから産出したからいう) 梳毛(そもう)織物の一。薄地の毛織物で、わが国ではメリンスとも呼ぶ。綿製のものは綿モスリン。→メリノ→メリンス

メリノ【merino スペイン】(1)羊(ひつじ)の一品種。スペインの原産。大形で強健。牡は長い螺旋(らせん)形に巻いた角をもつが、牝は無角。毛は白色で、質は極めて優秀。オーストラリア・ヨーロッパ・アメリカなどで広く飼育されている。(2)梳毛(そもう)織物の一。メリノ羅紗。(3)羊毛の細糸。

メリンス【merinos スペイン】(メリノ羊の毛で織ったからいう) 薄く柔らかく織った毛織物。とうちりめん。【―友禅】【―友禅】

となっていました。

モスリンという言葉を初めて知ったのは、中学校の教科書に載っていた有島武郎の「一房の葡萄」の一節だったと記憶しています。これについては、寄り道が、というか思い入れがたいへん深いので、例によってこっちにまとめておきました。(下記*4) 

メリンスに似た言葉として、メリヤスというのがあります。念のためとひいてみたら、思いがけないものに行き当たったので、これも紹介しておくことにします。

めりやす(メリヤスのように劇に合せて曲が延びちぢみするからという。また、「滅(め)入り易い」曲であるからともいう)(1)歌舞伎下座音楽、長唄の一種。思い入れなど、台詞(せりふ)なしで仕草を長く続けるとき演奏し、しんみりとした情緒に富む。独吟・両吟がある。「高尾」「黒髪」「五大力」など現存。(2)義太夫節の三味線の手。台詞(せりふ)や動きの伴奏として短い手をくり返し演奏する。

本来のメリヤスは、

メリヤス【medias スペイン・meias ポルトガル・莫大小・目利安】綿糸・毛糸などをループ状の編み目の集合により、よく伸縮するように編んだもの。表と裏と編み目が異なる。猿蓑「はき心よき―の足袋」(凡兆)

ということでした。私は関西出身なので、メリヤスというと「ぱっち」を連想します。「ぱっち」というのは、関東で言う「ももひき」、ズボン下のことですが、伸縮性の強いメリヤスの特性を利用して、肌触りもよく、タイツのようにぴったりと足に張り付くのが特徴です。メリヤスは、かつては高級下着の代名詞でもあったのですね。

友禅と対で手間のかかる染め織りとしてあげられていた小紋は、

こ‐もん【小紋】細かい模様を散らしたもの。また、それを型染めとしたもの。江戸時代には多く上下(かみしも)に用い、今は婦人の和服に用いる。【小紋返し】【小紋型】【小紋革・細紋革】【小紋染】

というわけでした。どっちかというと関西よりも江戸関東で流行した柄のようです。たしかに渋くて「粋」というんでしょうか?でも、なんというか、上から目をつけられないように、こそこそ隠れて見栄をはるというようなせこい感じがしないでもないのが複雑なところです。いまの組織社会の風俗と同じですね。

さて、センテンス後半の、湯通し・湯熨斗(ゆのし)ですが、これは、

ゆ‐どおし【湯通し】‥ドホシ(1)織物をぬるま湯にひたし、糊気を去って柔軟にし、あとで縮むのを防いでおくこと。(2)料理の下ごしらえとして、材料を熱湯にさっと通すこと。臭みや油気を抜く。

ゆ‐のし【湯熨】布地を湯でしめし、または湯気に当ててしわなどを伸ばすこと。

つまり、織り上げた布の風合いを整える最終調整のことを言っているわけですね。

と、ここまできて、なんとまあ、肝心の御召という単語の意味を確かめるのを忘れてたことに気がつきました。

お‐めし【御召】(1)呼び寄せること、乗ること、着ること、また、着物などの尊敬語。「―になる」(2)「おめしちりめん」の略。【御召縮緬】【御召納戸】【御召物】【御召列車】

あれ?御召縮緬って、【文化御召】の最初の意味不明の語釈、御召縮緬(ちりめん)の一種のもととなったことばだな?と気がついて、ひいてみると、

おめし‐ちりめん【御召縮緬】(もと貴人が着用したからいう) 先染め・先練りの着尺地(きじやくじ)。緯(よこ)に強い撚りをかけた糸を織り込み、製織後微温湯に入れて「しぼ」を立てた絹織物。縞・無地・紋・錦紗などがある。おめし。

着尺地(きじやくじ)というのは反物のこと。

それはともかく、この語釈を読んで、なんとまあ・・・と、しばし絶句。

最初にこれを引いておけば良かった。そうしたら、ずっと楽に要領よく探索が出来たはずなのに・・・

えてして、調べものというのはこういうものだということはわかってはいるのですが、こうも典型的な遠回りの過程を現実に経験すると、自分であきれかえってしまうというか、唖然としてしまいます。

というわけで、気をとりなおし、元の語釈に立ち戻ってその語釈を再度確認してみると、

ぶんか‐おめし【文化御召】‥クワ‥壁御召縮緬(ちりめん)の一種。経(たて)に紡績先染絹糸を、緯(よこ)に壁撚糸を用い、湯通し・湯熨斗(ゆのし)を施して波状を出した平織織物。

こんどはその意味が、目から鱗が落ちたように明らかになったのには、さすがに自分で感激しました。努力?のかいがあったなあ。

というわけで、以下、私が理解した語釈の解説です。

本来の壁御召縮緬は、経(たて)に縒(よ)らない平生糸を、緯(よこ)に壁糸を用いた縮緬の一種で、先染め・先練りがその特徴です。

縮緬自体は、緯(よこ)に強い撚りをかけた糸を織り込んで、湯通しでその撚りが戻るのを利用して「しぼ」をたてるのですが、壁糸は、強く縒(よ)った太い糸を細い平糸の周囲にまきつけるように縒りあわせた糸ですから、それ自体で織り上がり後に自然に横糸にちぢみが出てしぼが立ちます。

これを縮緬にみたてて、皺(しぼ)の立ちかたが通常の縮緬と異なることから、壁縮緬と言ったわけなのですが、壁縮緬はかならずしも先染め・先練りではありません。

また、この壁縮緬は、たしかに風合いのすばらしい品格のある織物ではあるのでしょうが、その材料、工程、手間ともに大変なもので、とても高価な反物です。

そこで、考え出されたのが、機械紡績ではむずかしい平糸の使用を避けて経(たて)に機械紡績による片撚(かたより)の絹糸を、緯(よこ)にも紡績糸を芯にした壁撚糸を使い、湯通し・湯熨斗(ゆのし)で強制的に糸ののびちぢみの具合を調整し壁縮緬風の風合いを整える方法だったというわけです。

さらに、工程を簡素化し、工業的に安価に生産できるように染色は糸を先染めすることにしたことから、先染め・先練りがその特徴だった御召縮緬の名をもらい、さらにその高貴な壁御召縮緬を工業的に簡単に安価に生産してみんながそれを着ることが出来るようになったという喜びを表して、【文化御召】という名前がつけられたということなのでしょう。

そう考えると、【文化御召】の「文化」は、決していかがわしいものなんかじゃありません。目から鱗がおちただけじゃなく、まさに目の梁がとれたような気さえしてきました。(下記*5)

しかし、広辞苑の語釈は、「しぼを立てる」という言葉をつかわず、「波状を出した平織織物」という言葉でしめくくられています。

ここに、なんというか、いかがわしいというよりは、そこはかとなくかなしい「文化」の香りが漂ってきます。

広辞苑というのは、内容記述の雑然さや不統一などいろいろ批判があるにしても、能楽関係や科学技術的記述へのこだわりとともに、こういうところに、たくまざる(ブラック)ユーモアとすばらしい情緒的センスがにじみでてくる、大変読み応えのある辞書だと思います。

というわけで、寄り道だらけ、脳味噌ぐちゃぐちゃ欣喜雀躍泥沼惑溺辞書探索の旅はこれでおしまいです。知的好奇心の発露としての娯楽としては、これほどお手軽でおもしろいものもないでしょうが、それにしても、今回は疲れました。

本当は、広辞苑だけでなく、ほかの辞書、参考書まで手を広げて探索すれば、もっとおもしろい展開になったかも知れませんが、それは考えただけでも気が遠くなりそうです。でも、また、こういう興味を引く言葉があったらやってみてもいいなと思う気持ちは否定できません。

-------

 

*1:練糸の練は精錬の意味だったんだいうことに、おそまきながら気がつきました。

これで長年の疑問が氷解しました。というのは、なにで読んだのかすっかり忘れてしまいましたが、どうせ江戸戯作本か江戸川柳末番(エロチックな句ばかり集めたもの)の解説本なのでしょう、「女房殿を使いに出して、二、三里ばかり歩かせて、ほどよくねれたところを、どうぞいただきたい」というような文章があったのですが、この「ねれたところ」というのがわからなかった。

解説には、女性がよく立ち働いたり歩いたりすればするほど、その、ある一定の微妙な箇所がしっとりと柔らかくたいへん具合がよろしくなるものだと、江戸時代は信じられていたとのことで、それでこういう文があるのだとか、そういうことが書かれていて、その状態にすることを「ねれる」と表現するんだな、と理解したのですが、それが「練れる」と書くとは気づきませんでした。

というわけで、そうとわかって、なるほどなあ、あそこを「練る」わけかあ、とその表現の奔放さというか巧みさに、心底感じ入ってしまった次第です。

しかし女房殿の立場に立てば、疲れて帰ってきて一刻もはやく眠りたいのに、なにやらむりやりおつきあいさせられるというのは、これはもう、大変な迷惑のように思えないこともないではないですが、まあ、男の私としては、純粋に科学的な見地から検証してみたいという向学心がいやがおうにもかきたてられたりもいたしまして・・・(以下自粛)

 

*2:小女子をひいてみたら、これまた寄り道がたのしくなって、これもこちらにまとめておきます。

こうな‐ご【小女子イカナゴの別称。また、その佃煮(つくだに)などの加工品。

いかな‐ご【玉筋魚】イカナゴ科の海産の硬骨魚。体は細長く槍形、体長約二五センチメートル。背部は青褐色、下腹部は銀白色。春、小さいのを捕って煮干・佃煮(つくだに)とする。俗にカマスゴという。夏には砂の中に潜って休眠。北日本に多く、九州まで分布。小女子(こうなご)。_季・春_[図]いかなご

と、ここまではいいのですが、そのあとの熟語例にしめされていた【玉筋魚醤油】が寄り道のきっかけです。

いかなご‐じょうゆ【玉筋魚醤油】‥ジヤウ‥イカナゴを塩漬にし、十分に塩熟した後、その汁を布でこして製した醤油。讃岐の名産。

おお、これは魚醤のことだ!

ぎょ‐しょう【魚醤】‥シヤウ「うおじょうゆ」に同じ。

うお‐じょうゆ【魚醤油】ウヲジヤウ‥魚類を原料として醤油状に作った調味料。いかなご醤油・いわし醤油の類。秋田の「しょっつる」はその一。魚醤(ぎよしよう)。

と、いかにも日本の特殊な調味料のように書いてありますが、これは、ほんとうは、アジアに広く分布している調味料の一種で、いわゆるオイスターソースなんかもその一種。本来は「なれずし」などの発酵食品とおなじく、保存食から発達したものです。ベトナムではニョクマムとかヌクマムとかいって、唐辛子とともに毎日の食卓にかかせないものです。

 

*3:この、金々先生栄花夢というのは、文化文政時代の江戸戯作黄表紙の祖となったという、恋川春町画作の戯作本ですね。

戯作本というのは、つまるところ、今のマンガ、劇画にあたるものと考えれば間違いはないようです。金々先生栄花夢あらすじは、田舎ものの金兵衛が、目黒不動産名物の粟餅を注文して待つ間に居眠りしてみた、山吹色が乱れ飛ぶ栄華の夢をみたという趣向のたわいもないお話ですが、謡曲「邯鄲」の廬生の夢に題材を求め、草双子が洒落本的要素を取り入れ、当時最新の風俗などを写し、黄表紙の祖となった作品だ、ということで、一度読んでみようかと思ってはいるんですが、未だに果たせてません。

謡曲「邯鄲」とか「草双子」とかについてご興味のある向きは、さすがにそこまでフォローするのはうっとおしいので、自分で調べてみてください。

しかし、この恋川春町って、すごい名前ですよねえ?

 

*4:モスリンという言葉を初めて知ったのは、中学校の教科書に載っていた有島武郎の「一房の葡萄」の一節だったと記憶しています。これについては、寄り道が、というか思い入れがたいへん深いので、例によってこっちにまとめておきました。

 そういって、先生は真白(まっしろ)なリンネルの着物につつまれた体(からだ)を窓からのび出させて、葡萄の一房をもぎ取って、真白(まっしろ)い左の手の上に粉のふいた紫色の房を乗せて、細長い銀色の鋏(はさみ)で真中(まんなか)からぷつりと二つに切って、ジムと僕とに下さいました。真白い手(て)の平(ひら)に紫色の葡萄の粒が重って乗っていたその美しさを僕は今でもはっきりと思い出すことが出来ます。
有島武郎一房の葡萄」赤い鳥傑作集 坪田譲治・編、新潮文庫

おどろきました。モスリンではなく、リンネルでした。

リンネル【linie're フランス】亜麻の繊維で織った薄地織物。リネン。

どうしてモスリンと記憶違いしたのか、不思議ですが、きっと、やわらかな白い薄地の織物のイメージが強かったのでしょう。

一房の葡萄」のストーリーは全く忘れてしまっていたのに、引用した部分の一節だけは、ほとんど全文が暗唱できるほどに覚えていました。リンネルとモスリンの違いを除いて。

よほど、印象的だったのだと思います。

やさしい女の先生が、窓のそとの緑の葡萄棚に、やわらかな白い薄地の着物につつまれたしなやかな体をのびださせて、白い手で紫の葡萄をもぎ取る姿。

そして、緑の蔭が美しい窓を背景に、リネンの袖からでた白い手首と、白くしなやかな指に持った細長い銀色の鋏が、粉をふいた濃い紫色の葡萄を大理石のような白い手の上でぷつりと二つに切るイメージ。

配色の美しさは、ほとんど官能的です。すべてが、あかるい金色の光の中のソフトフォーカスに納められた一シーンとして、本当に体験したことのように記憶に焼き付けられています。

作品を読み直してみて、これがおそらくは、横浜のインターナショナルスクール?の一シーンであることや、先生が外国人であること、そして、どうして引用のようなシーンに至ったのかを、初めて知ったような気がしました。

これは、北海道、それも時計台の見えるプライベートスクールでのシーンだと思っていたのです。

この作品を読んだころ、音楽の時間で「時計台の鐘が鳴る」という曲を学んでいためにイメージが混同されてしまったのが原因でしょう。

就職して初任地の札幌で、そのイメージを探し求めたのを覚えています。

しかし、このイメージ、いままではっきりとは意識していなかったのですが、今回あらためて、自分のいろんな方面への好みに、とても大きな影響を及ぼしているように感じました。

長じて女性のスタイルに感心が高まる頃からは、薄く柔らかな白いブラウスにつつまれたしなやかな体の女性が体をのばし、美しい胸が形よく突き出すイメージというのを想像するだけで、ほとんど官能的ともいえるような興奮を覚えたものでした。

いやはや、ほんと、子供の頃のすり込みというのはこまったものです。

一房の葡萄」全文は「青空文庫」こちらのページをどうぞ。

 

*5:まさに目の梁がとれたような気さえしてきました。

この表現に出会ったのは、教会で牧師さんの説教を聞いているときでした。この、「梁」というのがどうしても理解できずにこまって、質問したのですが、「そういう大きなものが目の前にあって正しくものをみる邪魔になっている」といういみのことだと説明されて、よけいにわけがわからなくなりました。もとの言葉(原語)は、どういう言葉だったのでしょう?