蕗狩軽便図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

読むだけで腰痛が治る本というのを読みました。必ず効くかは微妙な気がすることと、TMSは「鉄道模型趣味」のことじゃなかったという話です

読んだら腰痛が治るという本を薦められました。

・「腰痛は〈怒り〉である  痛みと心の不思議な関係 普及版」長谷川 淳史

・「サーノ博士のヒーリング・バックペイン腰痛・肩こりの原因と治療」ジョン・E.サーノ

白い表紙の「ヒーリング・バックペイン」が本家で、赤い表紙の「腰痛は怒り」はその布教本?のような感じです。

緊張性筋炎症症候群(TMS = Tension Myositis Syndrome)という疾患が、首や肩、腰、臀部、腕、脚などにごく一般的に見られる痛みの主な原因になっているという理論です。

ものすごく乱暴にまとめると、「痛みは脳が感じるものである。様々な精神的ストレスから心をそらす手段として脳が身体の痛みを作り出している。そのことを脳に認識させることによって痛みは消え腰痛は治る」という心理学的な治療方法で、この本を読めばそれが理解できるので腰痛が治るというわけです。

聞くからに怪しげですが、これで本当に腰痛が治ったという人の薦めですし、とにかく読みました。

赤い方の本はNHKの教養バラエティー番組のような語り口でなかなかいっこうに本題に入らず読んでいてまだるっこしくて大変でしたが、白い方の本はいきなり本題に入って例を引きながら様々な角度からどんどん話を進めていくのでそれなりに納得のいく気分で読み進められました。

病の原因がスピリチュアルな要因に結びつくのは否定しませんし、実際自分もそうかもという経験があるのでなるほどと思いつつも一つ間違うと危険だなとも感じました。

腰痛の場合は原因不明の例が多いことからこのTMS理論の適用が上手くいってそれなり以上?の効果が認められているのだろうと思います。しかし他の部分の痛み、実際に病変が直結している痛みに対してもこのTMS理論を強引に適用されてしまうと困ったことになりそうです。そしてそうなる可能性は大だと思います。

もちろん医者に診てもらってその痛みが深刻な原因によるものでないか確かめることも必要と(ちょこっと)書いてあります。しかしほとんどの医者は痛みの原因を器質的な故障や病変によるものとしてTMS理論を顧みず間違った療法を行なっており、それらはすべてプラシーボ効果によって一時的に症状を改善しているに過ぎないと言い切って、TMS治療を成功させるにあたってはまず一切の理学療法運動療法を止めよと書いていたりするのが読んでいてなかなか微妙に感じるところです。

ということで、TMS理論のなんたるかは理解できるし、それである意味自分の腰痛の一部は軽減する気がしますが、股関節やCM関節症始め全ての器質的疾患の痛みが消えるのかというと、それはどうなのかなという気がしないでもありません。

痛みとメンタル負荷がトレードオフの関係と捉えられているのも気になります。

腰痛を治してメンタル崩壊というのも大変です。TMS療法で全く改善が見られなかった数パーセントの人達は心に深刻な問題を抱えていることがわかり別途心理療法を継続して行なっているとも書いてありました。

また、TMS療法は決して催眠療法的なものではないと明言しているにしろ自己催眠的に痛みを感じない身体になったら、確実に取り返しのつかなくなるまで炎症が拡大し関節が壊れてしまうことになると思います。

それは嫌です。それは避けたい。豆腐メンタルを自認している蕗狩軽便図画工作部シュレマル工房としては痛みもメンタル崩壊もごめんです。

全体を通して読んで、TMS理論を否定する気は全くありませんが、本の最後の方では、再度物凄く乱暴に意訳すると「幸せで心穏やかな充実した人生を送っている人達は腰痛始めどんな病気にもならない」みたいな話になってきてさらに微妙な雰囲気になります。

それこそ信じるものは救われるの世界になりそうですし、実際「TMSに取り組んでいていちばん残念に思うのは、患者が解決方法を求めて藁にもすがる思いになるまでは、この概念を受け入れてもらえないのが現実だ」と書かれていたりします。

結論づける際に「私の経験からは……」とか「私はそういう実例を見たことがない」というふうなあまり客観的とは思えない表現が頻繁に登場するのも気になります。

そんなこんなで、この本、確かに効果がある場合もあるとは思いますが、なかなか他人には安易に薦めにくい本かなというのが読後の感想でした。

ただ、読んだ後何となく腑に落ちるというかそんな感じがして、たしかに腰の痛みの感じ方が変化したような気がするのを追記しておきます。おそらくこの本の書き方自体に高い心理療法的効果みたいなものがあるのだろうと思います。

注意しないといけないのは痛みについての感じ方が変わっただけで、器質的な疾患が改善したわけではないということでしょう。この本によれば器質的な疾患はほぼ全てと言って良いほど治療する必要などないと言い切っていますが、それはやっぱりしっかり整形外科に診てもらっておくのが良いと思います。

豆腐メンタルへの影響が予想不能なことも考えると、そちらに不安がある場合は注意が必要な気がします。

 

追記;

ここからは、いちびりいらんことしいの戯言です。

「TMS」は、鉄道模型ファンの間では、模型雑誌「鉄道模型趣味」のことを指します。ローマ字表記 Tetudou Mokei Shumiの頭文字です。

また鉄道模型趣味を楽しむのに必要な Time, Money, Space の頭文字とも言われます。

なので鉄道模型ファンに「TMS という疾患が、首や肩、腰、臀部、腕、脚などにごく一般的に見られる痛みの主な原因になっている」という文を見せたらどんな反応をするか、ちょっと楽しそうです。