近世ヨーロッパの歴史的戦争の絵画や映画でよく見られる大砲は、「前装滑腔式野戦砲」というそうです。
かっこいいので、一つミニチュアが欲しいな、とフリー3Dデータサイトで見つけたモデルをプリントアウトしてみました。
カッコいいです。がしかし、当時の野戦砲は、対歩兵、車両用として使用される場合、水平〜俯角での射撃を行うと聞くのに、この構造ではそれが出来そうにありません。ざっと検索してみましたが近代兵器のように砲身射角を調節する機構がよくわかりません。
そこで勇気を振り絞り、X(旧Twitter)でラノベ「カノン・レディ〜砲兵令嬢戦記〜」の作者に尋ねたら、参考画像付きで親切なリプライをいただきました。
ごきげんようですわ🤗
結論から言うと、そのデータでは仰俯角調整機構が省略されちゃってますわね🫠
一般的なカノン砲は画像の通り、砲尾の部分に仰俯角調整用のスクリューが付いてますわ
これをハンドルの要領で回すと砲尾が上下に可動し、仰俯角角が調整できる等になってますの~ pic.twitter.com/4J2zLPZwr6
— 村井 啓@砲兵令嬢戦記(書籍化/コミカライズ決定!) (@canon_redy) 2023年11月28日
どうやら大砲のお尻に付いている乳首様の出っ張りに高さ調整できる支えを当てて砲身の角度を調整する仕組みの様です。
側面図だけなので構造がもうひとつよくわかりません。なのでさらに調べていたら、「大砲 (前装滑腔式野戦砲)の一般解説」というページが見つかりました。
掲載されている砲身の図面を引用します。
射角を調整する為に、砲身の後端には高架ネジ取付口( Elevating Screw Mount )が設けられています。なら鈴玉/乳頭状 突起( Cascabel Neck )がこのような形でなければならない理由はありません。つまり高架ネジ上端を当てがって支えるための突起ではないということになります。
じゃあ何の為にこんな乳首のような形状のものが必ずと言って良いほど当時の大砲砲身の後端にくっついているのだろう、という疑問が湧きました。「大砲 (前装滑腔式野戦砲)の一般解説」の中にもそのことについての言及はありません。
しつこくいろんなキーワードで検索していたら、帆船模型のフォーラムで目的の情報を見つけることができました。
本来は艦載キャノンのリコイル(砲弾射出反動による砲身後退)を止める為のロープを括り付ける突起で、一部には環状のものもあった様です。この形状が陸上野戦砲となっても踏襲されていたということでしょう。
しかし、絵画や映画などの陸上野戦シーンや、海戦シーンでさえもカノン砲リコイル防止のブリーチラインを使用しているのをみたことがない様な気がするのですが、知識なく気づくことは難しかったのだろうと思います。
この乳首様の突起が本来は縄を掛けてリコイルで砲身が動かないように縛り付けるためのものだったと知ったときはちょっと感動しました。砲身のデザインとして回転体へのこだわりがあったのかも知れません。
野戦砲の場合はこの乳首の付け根に架台に取り付けた高架ネジの先を突き当てますが、艦載砲の場合は尻にブロックを挟み込んで射角調整していたようです。
ということで、今回もお手軽ネット検索限定のセルフリファレンスサービス活動でしたが、わからないこと知らないこと疑問解決資料情報探索の、なかなか楽しい旅となりました。
こういうことに興味が湧き、わからないこと知らないことを調べて嬉しくなれるうちは、まだ大丈夫かな?と、少し思っています。