蕗狩軽便図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

アウストラルの意味と欧米人は(言語的に)ズルいという話

テレビでチリのアウストラル街道の旅行記番組を放映していて、「アウストラル」って、「アウストラロピテクス」となんか関係あるのだろうか、と検索してみました。

すると、“アウストラロピテクスとは「南の猿人」という意味であり,Australis=南,pithecus=無尾猿類の二つの言葉をつなげたものである。”(出典:科学のあゆみところどころ 第26回 人類の先祖は何か)とありました。

「アウストラル」というのは「南」という意味だったのかと、今頃……^^;  

つまり「アウストラル街道」とはそのまんま「南街道」というわけでした。

ということは、オーストラリア AUSTRALIA 、オーストリア AUSTRIAも関係あるのかと調べたら、

"オーストラリアの名称の由来は、“古くから伝説として語り伝えられてきた「テラ・アウストラリス・インコグ ニタ(未知の南方大陸)」に由来する。 「オーストラリア」は、この言葉が 英語化されたもの”(出典:オーストラリア連邦 -東京都立図書館

とありました。

やっぱり同じくアウストラルがその語源です。

ところがオーストリアの名称の由来を調べてみると、

オーストリアというのはドイツ語で「東の国」に由来しています。ドイツ語を考慮したオーストリアの日本語表記「エースターライヒ」というのはost (東方)と mark (辺境地)から変容したOsterreich(東の辺境区)が語源になっているのです。「オーストリア(Austria)」というのはドイツ語読みのエースターライヒを読みやすくした形です。”(出典:ヨーロッパ史入門 オーストリアの国名の由来

とあります。

オーストラリアは南で、オーストリアは東?? 一体どうなってるんでしょう?

ドイツ語の”ost”を読みやすくして“aust”とした、って、なんで英語やラテン語で「南」という意味のある単語の綴りに変換したのか良くわかりません。

で、もう少し調べてみたら、こんなページにいきあたりました。

外国語学習に疲れたら読むブログ(語学を楽しもう!非実用的な外国語ネタのまとめブログです。)

【似ているけれど・・・】"Austria"と"Australia"の語源は実は同じだった?

ここに丁寧に解説されていました。

歴史や語学に疎いというか適性のないシュレマル工房は、ラテン語がヨーロッパの一番古くて元になっている言語だと思っていたのですが、そうじゃなくて、“australは、ラテン語auster「南の風、南」から派生したaustralisから、イタリック祖語の形容詞*aus-tero-「日の出の方向」に由来(中略)、ルーツは印欧祖語の語根*aus- (1)「輝く」(出典:Online etymology dictionary)”だったのだそうでした。

日の出の方向は「東」なのに、なんでaustralが「南」を指すようになったのかというのは、イタリアの地理的位置関係に由来するのだそうで、“その昔、実際には東南方向に延びるイタリア半島の方角を「南」だと誤った結果、「日の出の方向」は「南」になった” ため、本来「東」をしめす“aust”がラテン語で「南」を示す言葉となった、というめちゃくちゃややこしい話になってまして、ほんまかいなと思いますが、このページでは各種引用を通して丁寧に説明されています。

それはともかく、良く考えてみたら、英語、ドイツ語、など印欧祖語の言葉もイタリック祖語(ラテン語系)のイタリア、フランス、スペイン、ポルトガル語などの言葉も、それぞれの祖語圏内では文法もそう変わらない上に、使用している文字もアルファベット一択です。

つまり根っこでは全て結構繋がっていて同じ語源の似たような単語がいっぱいあるわけで、読み聞きすれば正確でなくとも意味はある程度想像がつく(おそらく技術用語などは特に)、つまり読み書きする分には日本人が離れた地の方言を聞いているよりもよほど理解ができるんじゃないかと思えてきます。バイリンガルトリリンガルが普通にいるのも道理です。だって語学的にそんなに学習に苦労しなくても大丈夫そうだもの。

言語体系も発音も文字も共通する文化背景も無い我々からすれば、あいつら欧米人(特に大航海時代より以前からずっといる白人)どもはズルいと思います。特にシュレマル工房のように語学のさいのう、適性の無い人には、なんかものすごく羨ましい環境のような気がしてなりません。

そう考えたら、日本も中国も、欧米諸国総出で構築した科学、文明、文化を、自国独自の文字言語体系だけで記述しカバーするだけでなく、独自の技術、文化、概念を持ち、そしてそれらを統合して更なる文化文明を作り出す事も可能(と言ったって一部の秀才天才だけの業績ではあるけれど)というのは、凄い事なのだろうと思います。