蕗狩軽便図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

鉄道模型の機関車や電車のウェイト(錘)に最適な金属は、という話です

鉄道模型の機関車は軽いとスリップして客車や貨車を牽いて走ることができません。電車も同じくモーター車が重くないとスリップして動けなくなります。

なので車体内の狭い空間に出来る限りのウェイトを積み込みます。

(注:かと言ってあまりにも重すぎると今度は動力機構に負荷がかかって寿命が短くなったり壊れたりしやすくなるのでそれはそれで問題です。なので車輪タイヤにゴムベルトリングを嵌め込んで摩擦力を上げる方法もよく採用されていますが、集電性能に問題が出るので非常に小型軽量な動力車には難しいところです。)

そこでとにかく重要なのがウェイトにする金属の種類です。当然重くて加工しやすいもの、通常は鉛が使われます。柔らかくて加工しやすいし融点も低いので必要な形に鋳造することもできます。シート状の鉛は簡単に切り刻み積み重ねて整形出来るのでよく使われます。

最近はNゲージやナローゲージの小さな機関車を楽しむ人が多くなり、特に工作派の間では、鉛以上に高密度で比重が高く、加工しやすいウェイトの素材についていろいろ議論されているようです。

そこで、いらんことしいの蕗狩軽便図画模型工作部シュレマル工房は、金属の鉄道模型ウェイトへの利用可能性の検討のため、その比重別に性質、加工のしやすさ、入手のしやすさ、価格について調べて表にしてみました。

これを見ると、ウェイトとして一番重要な比重と加工のしやすさに注目すれば、純金が一番、次にプラチナ、でしょうか。経済的に余裕がある方々には絶対のおすすめのように思います。

タングステンも比重の高さでは劣りませんがとても硬い金属で著しく加工性に劣ります。価格は金、プラチナに比べたら比較にならないくらい安価だとはいえ、その価格は鉛の20倍。なかなか微妙なところです。かつてのミクロウェイト(備考参照)のような製品があれば良いかもしれません。タングステンは毒性もほぼ問題ないようですし。

ウラン(劣化ウラン)は、タングステンとほぼ同じ比重で柔らかく加工性も高いそうですが放射線による危険性が高く、加工にも特殊な条件が必要なようですし触って遊ぶ鉄道模型に使うにはどうかと……。価格もタングステンの2.5倍です。

というわけで現実的にはやはり鉛が、取り扱い、安全性に配慮して使用すれば、鉄道模型ウェイトに求められる要素として必須である比重、使いやすさ、価格、入手性の点から最適、最良の金属素材となるのではと思います。

金属を比重別に並べ、性質特徴、用途、加工の容易さ、価格などの表を作り、ツラツラと眺めていて初めて知るようなこともあって興味深い限りでした。

こういうのも言葉、用語の辞書遊びと同じく、なかなか面白い遊びになりそうです。

 

備考:

かつてミクロウェイトという0.5ミリ直径の鉛粒ウェイトを蒸気機関車のボイラーなどに詰めて接着剤や塗料で固定するテクニックがよく使われていましたが、鉛粒の酸化膨張によってボイラーが爆発崩壊するなどの事故が相次いだためこの方法は全く見かけなくなりました。

タングステンのように硬くて加工が難しい金属の場合はもちろん、鉛の様に柔らかい金属でも粉末や小さなペレット状にして樹脂等の接着剤を混合すればどんな形状のスペースにも充填できるので、そのことによって極端に比重が低くならず、また経年変化による問題が無ければいちばん使い勝手の良いウェイト材料となりそうです。

混合剤としては気密性水密性の高い樹脂が一般的でしょうが、アマルガムという手もあるのでは、と思いつきました。銀粉と水銀のアマルガムはかつて虫歯治療の充填剤としてポピュラーな材料でした。混ぜた直後は粘土状ですが時間が経つと固まって形を維持します。水銀の比重は鉛の11.3よりも大きい13.6なのでこれなら言うことはありません。毒性にさえ留意すれば、最適な材料かもしれません。

ただ、硬度が高い金属とはアマルガムを作りにくいようで、タングステンの場合は適切な状態を形成しないかもしれません。どなたか試みてくれればと思います。