蕗狩軽便図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

「趣味」って何なの?(辞書語釈探索遊びです)

「ご趣味は何ですか?」と聞かれる場合、一般的には英語で言う「hobby」の事を指しているのだと思います。

「hobby」の意味を調べてみると、
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<プログレッシブ英和中辞典 > hobby [名](複-bies)C
・1 趣味,道楽(◇暇な時間に楽しみ目的で自らが積極的に行う活動;読書,音楽・映画鑑賞などは pastime の領域;趣味を聞くときは What do you do in your free time?;pursue one's hobbies. 趣味の世界をつきつめる。One of my hobbies is making model airplanes. 模型飛行機づくりが趣味です
・2(古)ホビーホース;棒馬(hobby horse)
・2a(初期の)ベロチペード(◇自転車の原型)
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「hobby」= 「趣味、道楽 」でした。

「趣味」の日本語語釈は、
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<広辞苑>しゅ‐み【趣味】
①感興をさそう状態。おもむき。あじわい。
②ものごとのあじわいを感じとる力。美的な感覚のもち方。このみ。「―がよい」
③専門としてでなく、楽しみとしてする事柄。「―にピアノを弾く」
④〔哲〕カントの用語。対象を美しいと判定する美的判断力の一つ
<新明解> しゅみ【趣味】
(一)一定の習練を経た後、味わえる、そのものの持つおもしろみなど。
「音楽の―を解する人」
(二)〔利益などを考えずに〕好きでしている物事。
「―と実益を兼ねる/―が広い/無―」
(三)〔選んだ物事や行動の傾向を通して知られる〕その人の好みの傾向。
「―のいいネクタイ/悪―」
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「hobby」にあたるのは広辞苑の語釈③と新明解の語釈(二)です。

「道楽」の語釈は、
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<広辞苑>どう‐らく【道楽】ダウ‥
(道を解して自ら楽しむ意から)
①本職以外の趣味などにふけり楽しむこと。また、その趣味。「釣―」
②ものずき。好事こうず。
③酒色・博打ばくちなどの遊興にふけること
<新明解> どうらく【道楽】ダウラク
―する 〔もと、法悦境に入って、我を忘れる意〕余暇を利用し、人生を豊かにするための趣味(的な仕事)に打ち込むこと。〔狭義では、金が有るのに任せて見果てぬ夢を追ったり逸楽にのめり込み、家財を傾けたりすることを指す。
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まとめると、趣味・道楽とは、本職・職業以外で余暇に利益を考えず好きで我を忘れて打ち込んで人生を豊かにする行い(仕事)だが、狭義には、金が有るのに任せて見果てぬ夢を追ったり遊興その他逸楽にのめり込み、家財を傾けたりすること」となります。

なんとなく納得したようなしないような……

気になるのは、プログレッシブ英和中辞典 の「hobby」に、(暇な時間に楽しみ目的で自らが積極的に行う活動;読書,音楽・映画鑑賞などは pastime の領域)とあること。

「pastime」ってなんじゃ?と調べてみると、
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<プログレッシブ英和中辞典 > pastime [名]C娯楽,気晴らし,レクリエーション
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「娯楽」のことでした。

ここで気がついたのは、日本では「趣味・娯楽」とひとまとめにされますが、英和辞書の「hobby」の翻訳語釈は「趣味・道楽」で、読書,音楽・映画鑑賞などは「娯楽」に分類されているということです。

「娯楽」は、
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<広辞苑>ご‐らく【娯楽】
史記廉頗伝]人の心をたのしませ、なぐさめるもの。また、楽しむこと。太平記18「人間の栄花、天上の―」。「何の―もない」「―施設」
<新明解>ごらく【娯楽】
生活のための労働や学業などの余暇に、気分転換をはかるために 遊びとして何かをしたり 見たり 聞いたり などして楽しむこと。
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です。

でも読書,音楽・映画鑑賞などが、「本職、職業以外で余暇に利益を考えず好きで我を忘れて打ち込んで人生を豊かにする行い」になることは普通にあるだろうし、「道楽」に分類される酒色・博打は「娯楽」と言って間違いじゃありません。

人によるし、必ずしもどうかは知りませんが。

「趣味」と「娯楽」の差って、「趣味」の例として紹介されるものを見ると、もともと曖昧なのかも知れません。

というわけで、日本では「趣味・娯楽」という言い方が一般的に使われてきたのだろうと思います。

ひとつだけ確かなのは、趣味も道楽も娯楽もみんな等しく、興味を持てて、楽しくて、夢中になれる、幸せになれる、つまり生理的に快感を覚えるものだろうということです。

快感は、脳にドーパミンなどの化学物質が作用して感じることがわかっています。

ということは、その人にとって快感を与えてくれるのなら、趣味、道楽も娯楽も仕事も、お酒も煙草もギャンブルも恋愛、性交も、麻薬幻覚剤始めさまざまなドラッグも、ひいては人間の3大欲求(食欲性欲睡眠欲)も、全て脳神経に快感を生む物質を供給するものと考えれば、その意味、位置づけは全く同じです。

純粋に快感を生む行動、処方?として、そこには優劣、貴賎、正否はありません。どっちが正しくて偉くて高尚で、どっちが悪くて卑賎で低俗なんて無い。

でも、それらが社会や属するコミュニティー(家族含む)に対して利害や影響を及ぼしたり、社会生活や人間関係での指標にもなりやすいのは、また別の話になるので除外します。しかし実際にはみんな結局そこのところをいちばん気にしているように思います。

また、人間が社会的動物として生きている以上、趣味道楽娯楽仕事その他の行動から直接的に得られる快感よりも、対人関係や社会、コミュニティの中で褒められたり好感を得たり尊敬されたりする快感が勝る人の方が多数を占めるでしょう。

趣味娯楽仕事その他行動からの直接的快楽と人間関係的社会的評価からの快楽とどちらを主とする人が幸せなのかはよくわかりません。

ただ、ともすればその二つの快楽に貴賎、優劣をつけたがるのは後者の快感をより求める人たちだろうという気はします。

難儀なことだと思います。

 

追記;

「趣味を持とう」という記事などを見ると、コミュニティーに参加し交流を広め深められることが趣味を持つ大きなメリットですと強調されていることが多いようです。

こういうのを見ると、「趣味」って一般的にはいったいどういう位置付けなのかなと改めてわからなくなります。