蕗狩軽便 図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

鉄道模型(模型鉄道)ジオラマのファンタジー性のことなどについて考えてみました

鉄道模型ジャンルのファンタジージオラマとは、ディズニーでもシルバニアでもジブリでも日本むかし話でも3丁目の夕日でもウォーハンマーでもあまたのRPGやファンタジーアニメでもなくて、しっかりした独自の設定と物語を持つ架空鉄道のリアルなジオラマなのではないかと思う。

ぶっちゃけ流行の明治時代開業当初の鉄道など、実物はもう存在しないのだから自由に想像を膨らませ物語を展開して立派なファンタジーの模型鉄道の世界が成立してなんの不思議も問題もない。既に擬人化コミックなども存在するくらいのファンタジーっぷりを見てまだ文句言う人がいたら蕗狩軽便図画工作部が受けて立ちまする。^^;

しかし、写実的フリーランスを含めて実物プロトタイプがある車両や鉄道施設を主役として物語を展開するファンタジー模型鉄道と、自由なデザインや極端なデフォルメで独自の形態を持つ車両そしてその設定に応じたフィギュア、ストラクチャ、シーナリィで物語を展開するファンタジー模型鉄道は別種と考えるべきだろう。

マチュアの自己満足の趣味道楽であっても、求められているものをよく理解してそれに応えることを前提としてつくるのか、自分のつくりたいもの表現したいものをつくってそれが受け入れられるか、の違いは大きい。

鉄道模型ファンの大多数が求めるものは、鉄道線路がある風景、それからでんしゃが走る光景だろう。だから鉄道模型コンテスト、展示会などに出して評価を受けるには、ファンタジーであってもそこを押さえておくことが肝要だ。

鉄道(模型)ファンが紡ぐ架空鉄道世界の物語が鉄道の創設や運営、技術、歴史にかかる業界内部的な内容とエピソード展開に偏りがちになることは容易に想像できる。だからこそファンにとって興味を引く魅力的な物語となるし模型作品はその1シーンを切り取って巧みに構成表現したものになる。博物館展示ジオラマのようなものはその典型例だとも言える。

一方、鉄道(模型)ファン以外の一般人にとって、実物プロトタイプがある鉄道模型作品はその車両や風景に記憶、思い出が有ったり、作品がよほどカッコよく見え、語られる物語がよほど魅力的で美しかったりドラマチックでない限り、興味を持って鑑賞されることはあまり多くはないと思われる。自由なデザインによるファンタジーな模型鉄道作品のほうがより好意を持って受け入れられ鑑賞されるように見える。

一般人が求めるのは、設定された世界が描き出す美しい景観とそこに登場する人物や車両たちが織りなすドラマ、物語を生き生きと語りかけてくれる模型鉄道によるファンタジーなのだ。

プロトタイプのある車両と鉄道施設を主人公とするタイプの鉄道模型ジオラマレイアウト作品は、バックにそのようなドラマ、物語を創り上げていたとしても、鉄道ファンでもなく予備知識もない一般人鑑賞者にそれを感じて貰うこと、理解して貰うことは、オリジナルな車両や景観で物語を展開するファンタジー模型鉄道作品に比べてはるかに難しいだろう。

ただ、プロトタイプのある鉄道模型ファンタジー作品であっても、その物語をジオラマレイアウト作品と並行して小説やコミックス、アニメ、ゲームなどメディアミックス的に展開し、その全てが補完し合いながら、観る人がその模型鉄道世界の設定やそこで紡ぎ出されるドラマ、ストーリーを楽しんでもらえる環境を整えることができれば、状況は変わってくるかもしれない。

ここまで書いて、これは既に機関車トーマスなどで行われていることだと気がついた。機関車トーマスは最初は絵本だった。しかし最初の映像化の段階で模型を採用していたのがそのまま鉄道模型との親和性を高めることになった。

展開の順序は逆だったが、結果的に機関車トーマスは、鉄道(模型)ファンでは無いごく普通の一般人に、積極的に好意を持って模型鉄道ジオラマレイアウトのファンタジーを受け入れ鑑賞して貰うことに成功し、さらには新たな鉄道模型ファンを増やすことにも繋がったのではないだろうか。

考えてみれば、商業的には映像作品から模型玩具その他グッズへの展開は昔から当たり前の様に行われている手法だし、オリジナル玩具と同時にコミックスやアニメその他のメディアに作品を送り出す手法も普通に行われている。

鉄道おもちゃではシンカリオンチャギントンなどもその例だろう。それらと鉄道(模型)ファンが好む鉄道模型(模型鉄道)ジオラマレイアウトの世界との違いは、おそらくはそこで語られる物語の内容、性向が、鉄道(模型)ファン寄りのものか、ごく普通の一般人や少年少女にも好まれるものかということだろう。

その違いを超えて、鉄道(模型)ファンでは無いごく普通の一般の人々に広く受け入れられ興味を持って楽しく見てもらえる鉄道模型(模型鉄道)ジオラマ、レイアウト、そしてその展示というのは、いったいどういうものなのだろうか。

 

追記;

主に鉄道(模型)ファンによってつくられることが多い実物プロトタイプがあるファンタジー模型鉄道と、独自の自由なオリジナルデザインで物語を展開するファンタジー模型鉄道は別種と考えるべきだと書きましたが、実はプロトタイプ派模型鉄道はオリジナルデザイン派模型鉄道に含まれる特殊な例のひとつという考え方もあると思います。

オリジナルデザイン派模型鉄道の場合、その世界設定や語られる物語の性向についての制限次第でどのようにでも変化、特化するからです。

だからオリジナルデザイン派でも実物プロトタイプ派を十分に納得させ共感を呼ぶ作品が沢山見られますが、その逆はあまり多くはありません。

どちらが上とか偉いとかのお話ではなくてただ表現手段としての構造がそうなのだろうというだけの話ですので念の為。