蕗狩軽便 図画工作日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

「後宮小説」読了

酒見賢一後宮小説」読了しました。

井上ひさし氏その他の著名人が高く評価した1989年第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品と聞いていたので期待に胸膨らませて読み始めたものの、途中何度か挫折しそうになりつつ、なんとか途中読み飛ばし気味になりながらも無事完読。

全体を通して、特に物語の2/3くらいまでは、なんと言いますかまあ敢えて例えて言うならば、今をときめき泣く子も黙る権威を誇るアート界の重鎮がプロデュースし、女優俳優歌手芸能人お笑い芸人作家弁護士政治家その他各界政財界の有名人著名人マスコミメディアが揃ってこぞって両手を挙げて軒並み口を揃えて寄ってたかって絶賛開催中の東京国立博物館特別企画江戸の肉筆浮世絵春画展(というより昭和の温泉街に必ずと言って良いほどあった秘宝館特別企画展示と言った方が当たってるかも)を、歴史美術研究家の広範な学術的背景資料と独特の偏執的解釈に基づく高尚で詳細な解説付きで畏まって見学鑑賞させられたような読後感でした。口悪くてすみません。

残り1/3になって「渾沌」という名の「昔から敵が多いのは、くそ真面目なやつかしからずんば大悪党だ。俺のようなやつには敵もいないが友もいない」と真顔で言ってのけるような渾沌としたキャラが大活躍し出して、展開はそれなりに退屈しなくなったものの、そのへんの下りはあえて言うなら一種のカリカチュア架空戦記?みたいなもんで、面白いか面白くないかはきっと人によるだろうと思います。

要するにこの小説は、単純に、自分にとって凄いワクワク感を感じさせてくれるような物語とは内容も構成も文体も根本的に趣が異なる世界で高い評価を得ている作品なんだろうと思いました。

あー、はい、つまり、この小説の面白さとその価値があまり良く理解できないのは、ひとえに私の無学無知無教養と知的理解能力文章能力の低さ品位の無さと残念なセンスによるものだと思います。そうに違いありません。

ただ、この世界設定やキャラ設定は架空歴史ファンタジーとしてもの凄く魅力的ですし、なろう小説の「薬屋のひとりごと」や「後宮も二度目なら」にほぼそのままと言って良いくらいのレベルで利用されていることは間違いありません。この「後宮小説」の設定をフルに活用して魅力的な作品をモノにしてくれたなろう作家さんたちに称賛を贈りたいと思いました。きっと他にも同じようにこの設定を踏襲した作品があるだろうと思います。魅力的ですもんね、この世界設定。

しかしあのめちゃくちゃな混沌的魅力に溢れた「渾沌」のキャラ設定は格別で、よほど扱いが難しいのか、なろう作品には登場していません。そういう意味で「後宮小説」は、やっぱり名作ファンタジーのひとつに違いないのだろうと、最後の最後になって潔く認識を改めた次第です。

でも最後の最後になって「渾沌」のキャラ位置付けを懇切ご丁寧にご開陳ご解説のくだりにはちょっとげっそり。そういうところにも、この小説の読後感に有識者の高尚で詳細な解説付き肉筆浮世絵春画展的な臭みを感じる理由があるのかもと。

でも、うん、思い返せば結構面白い筋書きだったよ、あんまり読んでて楽しくなかったけど、というところでしょうか。

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