蕗狩軽便図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

3Dプリント製クッキー型の制作とminne出品のことなど

シュレマル工房は、オンラインのハンドクラフトマーケットminneに、3Dプリントでつくったクッキー型やスタンプを出品しています。価格は難しいのでminneのアドバイスに従って、同じジャンルの出品とほぼ同じ水準くらいに設定しています。

ときどき「3Dプリンター製のクッキー型ってプラスチック製だし、一度データをつくればほっといてもどんどん同じものがプリントされるんでしょ?なのになぜあんなに高い価格がついているの?」と言われることがあるのですが、自分で3Dプリントの製品を出品するようになってから、決してそういうものではないということをつくづくと感じています。

購入してもらって問題なく使ってもらえる抜き型やスタンプをつくるには、デザインの考案もさながら、クッキーの生地を抜いたりスタンプを押すのに適切な形状や細部の省略方法などいろいろと配慮しなければならないことがたくさんあります。

このため3DCADソフトで設計作図した試作品をプリントアウトしては、生地を抜く段階での使い勝手、それから実際にクッキーを焼いてみた出来上がりの形状などを確かめながら、何度も形状その他の調整、設計変更作図をして最終的な形状にしていくという過程を踏んでいます。

さらにシュレマル工房ではプロの菓子職人の方に実際に抜き型やスタンプを試用してもらって意見をもらいながらの制作をしています。

自分のためだけの、その場限りのものとして、多少問題があってもなんとか使えれば良いというようなものならばともかく、多少なりともお金をいただいて提供するものにいい加減なものは通用しません。

そういうわけで、たまにオーダーメイド、セミオーダーメイドのリクエストをいただくこともあるのですが、シュレマル工房では原則申受けしないことにしています。

引き受けたいのは山々ですし、お断りするのがとても心苦しいことにかわりはありませんが、上にも書いたように実際にご購入していただいて問題なく使ってもらえるものをつくるには、オーダーメイドの場合は設計作図から、セミオーダーメイドであっても一部設計を変更して試作を繰り返し、実際にクッキーを焼いてみて出来上がりの形状や使い勝手などを確かめる必要があるため、納期や制作コストに見合う費用を提示して満足してもらえるのは難しいと考えて、そのように取り決めています。

自分のためだけに自分の思うようにつくるものとは考え方も要求されるモノの質も全く違うということを、クッキー型やスタンプをminneに出品して、初めてしっかりと感じ、理解することができたような気がします。

また、3Dプリンターの出力そのものにかかる時間や出力の失敗によるロスもあります。特に家庭用の安価なプリンターで安定して満足できるプリントを行うには、その都度丁寧に機械の調整を行い、材料の特性だけでなく気温や湿度を含めて環境に対応した印刷設定を行うことが必要になります。実際ちょっとした事で歩留まりはひどく落ち、時間と材料のロスは大変なことになってしまいます。

自分の趣味の延長である鉄道模型関係部品やキットなどの出品も同じです。自分が間に合わせに設計制作したもののようなレベルではとても購入してもらえるものにはなりません。いやというほど試行錯誤を繰り返し、製品として通用するものにしなければなりません。それでもまだまだ誰もに満足してもらえるレベルには及ばず、申し訳なくまた悔しく思うことも多々あります。

労力とコストを考えたらアマチュアが趣味として行うならともかく、プロとして3Dプリントの製品やキットを販売している方々は、あの価格でよくぞ販売していると驚くばかりです。

そういうことを考えると、自分が3Dプリントでつくったモノをハンドクラフトマーケットに出品しているのは、ほぼ趣味の延長と、あわよくば材料費くらいはカバーしたいと思う下心があるからなのだろうと思っています。