蕗狩軽便図画模型工作部日記

ー シュレマル工房 覚え書き ー

クラウンギヤのこと、提灯歯車、食い違い歯車のこと

なんかクラウンギヤがあんまりミソクソに貶されているみたいで可愛そうなので、変わったギヤ好きの私としては見過ごせず、ちょっと引っ張り出して観察してみました。

おー、ちゃんと見たことなかったけれど、こんな感じだったのか!

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これらのクラウンギヤと組み合わせるのは歯数8〜10枚程度の小径ギヤ(注:モジュール0.3の場合)が前提です。構造上当たり前の話ですが、組み合わせるギヤの歯数が多く直径が大きくなると歯が引っ掛かって回らなくなります。

またよく見ると、POM製はなんとなく歯のカドを落として丸っこくしているようですし金属製のでかいのもピッチに比べて歯が細く整形されていて、小径ギヤであっても本来無理のある噛み合わせ条件下でそれなりにできる限り支障ないよう長持ちするよう配慮されているんじゃないかと思われます。深読みかな?

一番ちっちゃい金属製の歯の形はさすがに論外かなと思ったのですが、実際にピニオンと噛み合わせてみると半径が小さいクラウンギヤの場合は逆にこの形の方が滑らかに噛み合わさるらしいことが観察できて、いや大したものです。ギヤの理論的な設計の考え方とかとは全然違う感覚での工夫でしょうか。

どっちにしろ非常に負荷の軽い精密機器やあまり強い力もかからず耐久性もそれほど気にしないオモチャなどに使うもので、実用動力機械など強い力を伝えるためのものじゃなし、目的用途をごっちゃ混ぜにして「文句たれぞう」してもあまり意味はなさそうに思います。

実用機械でも昔の水車などは木製のピン(金属製のピンもあったかも)を立てた歯車で十分使用に耐えていたわけですし、それは寿命は短かっただろうと思いますが、すり減ったら交換すれば良いという発想だったのでしょう。ピンを打ち替えるだけですしね。

木下製粉株式会社のサイトに掲載されている歯車の話のページには、木製のクラウンギヤとピニオンに当たる提灯歯車のイラストとその解説、それから歯の数を互いに素とすることの意味が丁寧に説明されています。

大きい歯車に一個余分につける歯のことを「無駄歯(むだば)」と言うというのが素敵です。「無駄」大好き!(^^)

 

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www.flour.co.jp

 

このサイト、ずーっと読んでいくと知らないことばかりで面白くて楽しくてとっても幸せになります(^^)

ということで、まあ、機械や部品に限らず、目的、環境、用途による割り切りと、合理性合目的性にそって最適と思われるものを手段手法として使えば良いというだけの話で、大抵の場合は皆そのようにしているのでしょうが、たまに知識情報不足や判断ミスから場違いの使い方をしていたり、割り切って合理的合目的的な使い方をしていてもその割り切り部分に文句をつけられてしまいがちなのが困ったところなのかも知れませんね。

追記:

パーツ入れのギヤを見てたらこんなのを見つけました。

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あれ?クラウンギヤの歯の向きが変……おー!ひょっとしてこれは食い違いクラウンギヤではないですか!

食い違いギヤといえば、有名なのはハイポイドギヤですね。クライマックス型の歯車式蒸気機関車に使われているやつです。ベベルギヤ(傘歯車)の一種で大きな力を伝えられますが設計製造が難しいし、たかがおもちゃになど使う道理がありません。

で、その代わりに使われているのがこの食い違いクラウンギヤという事なのでしょう。知らずに購入したギヤパーツにこんなものが混じっているとは意外でした。

これでクライマックス機関車の模型ができてしまいそうです。でもそのヤル気を出そうとするためのヤル気が出ないのがここのところのいちばんの問題です……