4連休の三日目、なんかぼーっとシェイギヤードロコを眺めていて、一部クラスタで思い出したように話題に上るユニバーサルジョイント(自在継手)の位相のことに連想が飛びました。
模型の場合は、ユニバーサルジョイントを使用した動力伝達ユニットには2通り見られます。
(注:もともとこのブログ、自分の覚書ですしめんどいんで以下全て図は省略します。ご興味のある方は、下記参考にしたページのリンクを参照するか、それぞれのキーワードでググってください。)
1つ目は、シェイギヤードロコの動力伝達ユニットのようなユニバーサルジョイント2連とその間に挟む伸縮部のあるプロペラシャフト(ドライブシャフト)で構成したユニット。(カルダンドライブの原型)
2つ目は、ユニバーサルジョイントの十字中子(クロススパイダー)とヨークの機能をT字型中子とカップに設けた長穴で代用するとともに、中子が軸方向に移動してジョイント部自体が伸縮する機能を持たせることによって、両端にT字型中子を固定した伸縮部の無いプロペラシャフトを使用する簡易方式のユニット。
それほどの精度も要らず大きな力を伝えるわけでもなし、模型としては圧倒的に簡単で作るのも楽な2つ目の構造が一般的だと思います。
で、ここからが本題。
思うに、カップリングバーの両端で位相が90度ずれる間違いの原因は、ユニバーサルジョイントの十字中子(クロススパイダー)と後者の簡易ユニバーサルジョイントユニットの両端に固定されたT字型の中子ヘッドを持つプロペラシャフトとを混同したか勘違いしたからではないだろうか、ということです。
だとすれば古今東西にかかわらずやたら間違える例が多いのもわかるような気がします。自分もそうでした。
そして、カルダン誤差のことをよく理解していないか意識から飛んでしまっている場合、簡易型ユニバーサルジョイントユニットから遡って、本来の正式な構造のユニバーサルジョイント2連を使ったユニットでもプロペラシャフトの両端のT字型中子ヘッドの位相を90度ずらしてしまうということが起こってしまったのではないかと思うのです。
もう一つの可能性は、軸が平行な場合のみに使われるオルダム継手との混同です。この継ぎ手は十字型の滑り中子によってカップリングされるので、この構造と混同したという可能性です。
ここで興味深いのは、オルダム継手の英語名はオルダム・カップリングということ。ユニバーサルジョイントは日本名を自在継手と言って、どちらも日本語では「継手」なのです。
本来カップリングは連結で、ジョイントは関節だから、意味が異なるのですが、同じ「継手」という言葉を採用したために、混乱が起こってしまったのではないかという推察です。
(ちなみにオルダム継手は平行な軸線の比較的小さな食い違いにしか適用できません。)
とはいえ、位相の間違いは日本でのことだけじゃなくて、世界各国、英語圏でもそれ以外でも頻繁に見られることのようなので、本当のところはよくわかりませんね。
ところで、シェイギヤードロコに限らずボギー台車へのユニバーサルジョイント動力伝達ユニットは、そもそも両ジョイントの変異角度が等しくない方が普通だと思うので、等速性については結構いい加減なのではないでしょうか?
特に、ギヤードロコの場合は、歯車はむき出しの埃砂利まみれで歯をジャリジャリとすり減らしながら動いているわけで、とにかく細かいことは気にしないみたいな構造ですから、そんなのは誤差の範囲に入るくらいの問題なのかもしれません。余談ですが、この手の機関車のそういうところが大好きです。
(追記:そういえばタイヤ踏面が規則的に削れてまだら模様になったシェイギヤードロコの写真を何処かで見たのを思い出しました。動力伝達の不等速性が原因でああなったのかな?)
ついでにもう一つ、それじゃ自在継手が一つしか使えない(ドライブシャフトにある2つの自在継ぎ手の一方だけで舵切りによる変異角に対応する)ようなFF自動車の前輪の動力伝達軸ってどうなってるんだろう?と思って調べたら、ちゃんと等速自在継手というのが使われていました。
CVJ(Constant Velocity Universal Joint)と言って、十字型中子の代わりにベアリングの入った滑り中子が使用されています。なるほどこういう構造があったのか、とちょっと感動しました。今はFRのドライブシャフトにも普通に使われているようです。
Nゲージの簡易ユニバーサルジョイントユニットのプロペラシャフト(パーツ名:中間ジョイント)両端に設けられた中子ヘッドには十文字に突起が出ていますが、あれでもこのCVJと同じような効果があるんでしょうか?どうもそううまくはいかないような気がするのですがよくわかりません。
ということで、なかなかちょっとしたおもしろい探索でした。
参考にしたページ
http://www.taiyo-koki.co.jp/UJ.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/71/704/71_704_1384/_pdf